▼ 目次
セットリスト&楽曲アレンジ秘話
「innocent world」
「赤い糸」
「ハナミズキ」
「空も飛べるはず」
「涙そうそう」
「Time goes by」
「Lovers Again」
「らいおんハート」
「涙のキッス」
「ラブ・ストーリーは突然に」
「SAY YES、別れの曲(ショパン)メドレー」
「OH MY LITTLE GIRL」
「Story」
「世界が終るまでは...」
「終わりなき旅」
今回も、すべての楽曲のアレンジを担当した、編曲家・中山博之さんに、アレンジを行なったポイントや聴きどころを話していただきました。

東京藝術大学作曲科卒業。
主な編曲作品「ジブリ・ザ・クラシックス」/Xbox360「ブルードラゴン」/「ロスト・オデッセイ」/「【DS版】ファイナルファンタジーIII」オープニング/「グイン サーガ」/「キングダムハーツ・ピアノコレクションズ」/「浅田舞&真央 スケーティング・ミュージック2009-10 カプリース」/「ファイナルファンタ ジーPIANO OPERA I / II / III、IV / V / VI、VII / VIII / IX」/「ファイナル ファンタジーオーケストラアルバム」/「Distant Worlds music from FINAL FANTASYコンサート」/「memoria!/下村陽子25周年ベストアルバム」/Apple Arcade「ファンタジアン」オーケストラピアニストとして東京交響楽団、日本フィルハーモニーとの共演、映画・TVコマーシャル音楽のピアノ演奏レコーディング、フィギュアスケートの 浅田真央選手がプログラムに使用した「カプリース」、NHK朝の連続テレビ 小説「梅ちゃん先生」の演奏を担当。
2006年 ポーランド大使館でショパン作品を演奏 2010年 ショパン生誕200年記念・NHKカルチャー主催のワルシャワ交流祭 ツアーに参加、ワルシャワ・パリにてショパンを演奏し喝采を浴びる。2011年 NHKラジオ第2文化講演会「ショパンとその時代」に出演 2012年 スペインのマヨルカ島、スイスツアーを開催 2014年 ブラジル・サンパウロにて海外初の「ピアノ・オペラ ファイナル ファンタジー」(国際交流基金主催)コンサートに出演 2015年・2016年「ピアノ・オペラ ファイナルファンタジー」ワールドツアー、パリ・ブリュッセル・ストックホルム・ロンドン・台湾・韓国・香港・シンガポール・ブラジル・メキシコ・ニューヨーク・ロサンゼルス公演に出演。2018年 東京白寿ホールにて、中山博之個展を開催。2021年東京オリンピック2020の開会式において、オーケストラ編曲したファイナルファンタジー""勝利のファンファーレ""が使用された。2022年10月から12月までNHKラジオ第2において、芸術その魅力「19世紀パリ音楽サロンへの旅」が13回にわたり放送される。2023年2月シンガポールにて、ファイナルファンタジーピアノリサイタルにソリストとして出演。2024年10月岐阜県で行われた国民文化祭開会式において、天皇皇后両陛下ご臨席の中、プッチーニ作曲トゥーランドットより「誰も寝てはならぬ」の室内楽編曲、ならびにピアノ演奏をする。
現在スクエア・エニックス公式YouTubeにて、ファイナルファンタジー作品等を編曲・演奏。https://www.youtube.com/channel/UCMx60HYcw1ieiPlZZagfqXQ
桐朋学園芸術短期大学非常勤講師、NHK、読売カルチャー講師。
「innocent world」(1994)
―オープニングを飾る1曲ですね。
イントロから90年代当時の空気感を感じてもらえるよう、あえて大きな変化をつけずに原曲の雰囲気を大切にしました。
ぜひ注目してほしいのが、大サビ前のビルマンくんのヴァイオリンソロです。ソロでメロディーを奏で、そこからハモリに入っていくのですが、そこが我ながらめちゃくちゃかっこよくできたなと(笑)。
このソロには、コンサートマスターであるビルマンくんを紹介する意味も込めているんです。 彼がソロを弾きながら、ほかのメンバーが奏でるメロディーを率いていく。
音だけでなく、ステージ上でどう見えるかも意識したこだわりのポイントです。
「赤い糸」(2000)
―どのようなことを意識してアレンジされましたか?
原曲が7分くらいあるので、どうまとめるかが大きなポイントでした。
単純に曲をブロックでカットするのではなく、構成そのものを組み替えて、いいところを残しながら自然に音がつながるよう工夫しています。
間奏からすぐにサビへ向かう展開や、原曲にはない転調も取り入れて、ただのダイジェスト版ではなく、曲の魅力をしっかり感じてもらえる構成になったかなと思います
「ハナミズキ」(2004)
―どんな雰囲気に仕上がりましたか?
前の「赤い糸」がハープで終わるので、そのつながりを意識して、あえて「ハナズキ」もハープから始めています。一青窈さんの透き通った歌声に合う木管楽器を中心に、アレンジしました。
前半は木管楽器を中心に優しく聴かせながら、3回目のAメロでは、ほぼ弦楽器が全員メロディーを奏でています。弦楽器が揃うことにより、力強く、堂々としたアレンジにしました。
前半の優しい響きと、後半の力強い響きでメリハリをつけることで、同じメロディーでも印象がガラッと変わるように意識しました。
「空も飛べるはず」(1994)
―どのようなアレンジになりましたか?
メロディーが翔けるように、弦楽器や木管楽器で疾走感のある音の流れを作りました。
フルートの細かい音の動きや、ヴァイオリンが奏でる背景のフレーズを組み合わせることで、よりメロディーを引き立てられたかなと思います。
また、スピッツさんの歌声が持つ軽やかさを失わないように気をつけました。
トロンボーンなど、スピッツさんの歌声に合う楽器でメロディーを奏でることで、オーケストラならではの厚みを加えながらも、原曲の雰囲気を大切にしたアレンジにできたかなと思います。
「涙そうそう」(2001)
―一番お気に入りのアレンジができたと伺いましたが…
そうなんです。結構仕掛けてみました(笑)。
まず、あえて切ない雰囲気のオリジナルの短い前奏から始めています。Aメロのメロディーの断片を使いながら、「何の曲が始まるんだろう?」と思ってもらえるような入り方にしました。
もうひとつの仕掛けは、2番のAメロ途中での転調です。予想できないような場所で転調することで、「おっ!」と驚いてもらえたらうれしいですね。
大サビに向けて、壮大な間奏を入れたのもこだわりのひとつです。原曲の素朴な魅力を大切にしながら、オーケストラならではの壮大さも感じてもらえるアレンジになったんじゃないかなと思っています。
「Time goes by」(1998)
―注目してほしいポイントはどこですか?
特に間奏ですね。独自のリズムを加え、楽器を交互に重ねながら、サビに向かって勢いをつけていく構成にしました。サビに入る前の助走のようなイメージで、大サビに向けて一気に畳み掛けていきます。
また、楽器の「音の艶」も意識しています。
実は、キーによって楽器が出しやすい音や響き方が変わるんです。今回は原曲キーにすることで、金管楽器などの艶やかな響きを最大限に引き出しました。
ぜひ、そうした楽器の「艶」にも注目して聴いてみてください。
「Lovers Again」(2007)
―どんな雰囲気に仕上がりましたか?
金管楽器やサックス、ドラムは使わず、木管楽器のやさしさや切なさを存分に感じてもらえるよう、あえて木管合奏をメインにしています。
弦楽器はあくまで背景にまわり、ハープやピアノ、グロッケンがそっと彩りを添えています。 音の引き算をしてチルらしい落ち着いた雰囲気を目指しました。木管楽器ならではの温かみや哀愁も、ぜひ感じてほしいですね。
そして、もうひとつ注目してほしいのがやはり途中の転調です。
それまで切なさのある雰囲気で進んでいた曲が、転調した瞬間に、まるで冬から春へと移り変わるように音がパッと色づくんです。この転調も、今回お気に入りのポイントのひとつですね。
「らいおんハート」(2000)
―どんな雰囲気に仕上がりましたか?
原曲のピアノ伴奏のバージョンと、バンドサウンドバージョンをミックスしたアレンジにしています。
前半はピアノを中心に、落ち着いた雰囲気で聴かせています。
そこから2番に入ってドラムが加わると、少しずつポップスらしいサウンドに変化していきます。
1曲の中で、しっとりとした雰囲気と、いつもの「らいおんハート」らしい華やかなサウンドの両方を楽しんでもらえるように、あえて異なるアレンジを組み合わせました。曲の途中で雰囲気が変わっていくところにも注目して聴いてみてください。
「涙のキッス」(1992)
―どのようなことを意識してアレンジされましたか?
やはり原曲の雰囲気を大切にアレンジしました。 Aメロではトロンボーンやトランペットがメロディーを担当し、サビに入ると、さまざまな楽器が入れ替わりながらメロディーを奏でていきます。大きくアレンジを変えるのではなく、楽器それぞれの魅力を活かしながら、サビに向けて賑やかに盛り上がっていく構成にしました。 また、桑田さんの歌声には、トロンボーンやトランペットといった金管楽器の音色がよく合うんです。そうした歌声と楽器の相性も意識しながらアレンジしています。
「ラブ・ストーリーは突然に」(1991)
―原曲があまりにも有名な曲だと思うのですが…
あえて変えたところ、あえて原曲の世界観を残したところがあれば教えてください。
変えたところはメロディーの後ろで奏でる背景ですね。
今回は、軽やかさと少しポップなノリをイメージした背景にしました。
基本のリズムやコード進行はあえて変えていません。
小田和正さんの透明感は失わないように心がけてアレンジしました。
「SAY YES、別れの曲(ショパン)メドレー」
―SAY YESから入り別れの曲に繋げさらにSAY YESに戻るという… 曲のつなぎめが難しかったのではないかと感じましたがいかがですか?
はい、難しかったです(笑)
でもかなりお気に入りかもしれません… 2曲の原曲キー(調性)を重視したかったので、その相性がなかなか難しく…そこは悩みました。 ピアノのカデンツァ(ソロの見せ場)を作って、転調しました。 あと率直にSAY YESが好き過ぎて、1回で終わるのは辛く、別れずに再会して感動的に終わりたいなと思いました。 ―ここを聴いてほしい!などポイントがあれば教えてください 意外にも「SAY YES」のAメロ(笑) サビの金管楽器もとても気に入っています。
「OH MY LITTLE GIRL」(1994)
―聴きどころを教えてください
まず注目してほしいのが、チェロのソロから始まるイントロです。 原曲はとてもシンプルな曲なので、その雰囲気を大切にしながら、違った魅力を感じてもらえるように工夫しました。
今回は、トロンボーンやホルンなどの低音楽器をメインにしています。尾崎豊さんの歌声が持つ哀愁やかっこよさは、こうした楽器の音色と相性がいいんです。
また、2番のAメロではファゴットのソロが登場し、チェロと会話するようにメロディーをつないでいきます。
ぜひ注目してほしいのが、2回目のサビで登場するサックスのソロです。イメージとしては、ライブで尾崎さんが歌っている隣で、サックス奏者も一緒に熱唱しているような感じです。いつもと少し違うアレンジで歌っているような、そんな特別感を楽しんでもらえたらうれしいですね。
「Story」(2005)
―どんな雰囲気に仕上がりましたか?
弦楽器の魅力を存分に味わってもらえるよう、弦楽合奏をメインにしたアレンジにして、映画音楽のような感傷的で壮大な世界観を表現しました。
ぜひ注目してほしいのが、サビに入っているオリジナルのフレーズです。メロディーが繰り返される中で、セカンド・ヴァイオリンやヴィオラが、感情が揺れ動くようなフレーズを奏でています。
主旋律を支えるだけでなく、弦楽器それぞれが歌うようにメロディーを奏でることで、音楽により豊かな表情が生まれるんです。さりげなく入っているフレーズですが、ぜひ耳を傾けてみてください。
「世界が終るまでは...」(1994)
―どんな雰囲気の曲になりましたか?注目してほしい楽器もあれば教えてください
原曲に近づけたかなと思っています、永遠のテーマです。
トロンボーンとバストロンボーンの勇ましさがポイントになっています。
中盤のソロまわしもあり、そこに被せるようにサックスもカッコよく奏でるので注目してほしいです。
「終わりなき旅」(1998)
―苦労された楽曲と伺いましたが…
そうですね。一番悩んだかもしれないです。 Mr.Childrenの桜井さん独特の歌い回しが魅力の曲なので、それを楽譜に落とし込み、オーケストラでどう表現するかが難しかったですね。
歌のメロディーそのものがとても印象的だからこそ、それ以外の部分をどの楽器で彩るかも重要になります。原曲の雰囲気を大切にしながら、背景で奏でるフレーズを工夫し、オーケストラならではの壮大さを加えました。サビの裏でヴァイオリンが刻むフレーズも、ぜひ注目してほしいポイントです。
そして、本編ラストを飾る曲ということもあり、終わり方にもこだわりました。原曲はフェードアウトしていきますが、今回は勇ましく、堂々と締めくくるアレンジにしています。
15曲を巡ってきた音楽の旅のラストにふさわしい、力強いフィナーレを楽しんでもらえたらうれしいです。
最後に、「1990s & 2000s Memories Collection」にお越しいただく皆さまへメッセージをお願いします
この度もたくさんのお客様にお越しいただき、感謝しかありません。 この時代の歌はやはりいつでも口ずさめる王道のメロディーであり、そして歌詞でもあります。その歌詞がない分、メロディーの持つ力を存分に味わえる公演になると思います。僕自身も聴いていたその頃を思い出しながら、皆様と共に楽曲の魅力を堪能できたら嬉しいです。